1958年4月15日に公開された映画『陽のあたる坂道』。
この記事では、映画『陽のあたる坂道』のあらすじ(ネタばれナシ)・みどころ・解説・感想をご紹介します。
映画『陽のあたる坂道』の予告編
自分は父の愛人の子であるという出生の秘密を抱え、斜に構えて生きる青年・田代信次。
彼は妹の家庭教師としてやってきた女子大生・倉本たか子と出会うことで次第に本当の自分の姿を取り戻していこうとします。
当時日活の大スターであった若き日の石原裕次郎さんが新境地を開いた名作であり、のちに妻となる北原三枝さんも共演しています。
映画『陽のあたる坂道』のあらすじ(ネタバレなし)
東京山手の閑静な住宅街で、家族と共に裕福に暮らす田代信次。
ある日父と話していた信次は、自分が父の愛人の子であることに気づいてしまいます。
妹の家庭教師・倉本たか子が住むアパートに住んでいる高木トミ子が自分の本当の母親であると知り、アパートを訪ねる信次。
高木トミ子は留守でしたが、そこにはトミ子の息子・民夫(信次の実の弟)がいました。
一旦は追い返されますが、後日再会して大喧嘩になりますが、やがてお互いに打ち解けていくのでした。
親子の葛藤、複雑な恋愛感情などを織り交ぜながらストーリーは展開していきます。
映画『陽のあたる坂道』の解説
東京タワーが完成し、皇太子妃が決まり世の中が岩戸景気に湧いていた昭和33年。
読売新聞に連載され大きな反響を呼んだ石坂洋次郎の小説を見事に映画化した文芸大作です。
「太陽の季節」などでワイルドな”タフガイ”として人気を博した石原裕次郎さんが、ナイーブな青年を演じ、新しい境地を切り開いた傑作と言ってもいいと思います。
この作品において、石原裕次郎さんの役柄は「エデンの東」のジェームス・ディーンをモデルにしたと言われています。
3時間を超える青春映画の大作となっており、後年にはリメイク版も製作されました。
この時代の若者たちの熱い鼓動が感じられる作品でもあります。
映画『陽のあたる坂道』のみどころ
ナイーブで屈折した青年を演じる石原裕次郎さんの伸び伸びとした演技が素晴らしいです。
どんなに悪党ぶっても石原裕次郎さんの育ちの良さは隠せません。劇中でも随所にそれが現れてきます。
この時代の作品に共通していますが、キャストが皆さん品格のある方ばかりです。
当時新人であった川地民夫さんのイケメンぶりは、60年以上経った今でも立派に通用しますね。歌も上手いです。
後年は脇役が増える川地民夫さんですが、この時期が最も輝いていましたね。
北原三枝さん、芦川いづみさん。美貌だけではなく、演技もご立派。原作の良さを活かしつつ、観るものを惹きつける魅力はさすがですね。
映画『陽のあたる坂道』の感想
今では失われてしまった東京の”山の手”の風情がなんとも懐かしく感じられます。
裕福であっても決して幸福とは言えない人たち。そして、豊かではないけど幸福に暮らす”下町”の人たちとの対比も興味深い作品です。
この時代は”ヒルズ族”や”タワマン”などのような胡散臭さのない、良き時代だったのだと痛感しました。
映画『陽のあたる坂道』の登場人物・キャスト
田代信次:石原裕次郎
倉本たか子:北原三枝
田代くみ子:芦川いづみ
高木民夫:川地民夫
田代玉吉:千田是也
上島健伍:小沢昭一
映画『陽のあたる坂道』のスタッフ
原作:石坂洋次郎
監督:田坂具隆
脚本:田坂具隆 池田一朗
音楽:佐藤勝
撮影:伊佐山三郎