1983年9月15日に公開された映画『ふるさと』。
この記事では、映画『ふるさと』のあらすじ(ネタばれナシ)・みどころ・解説・感想をご紹介します。
映画『ふるさと』の予告編
老人の伝三が暮らす街は、将来にダムが建設されるため沈んでしまう事が決まっている。
この映画は、認知が進んだ老人をどのように世話していくかという社会問題や、ダムを建設し地域の利便性を確保するには、そこに今まで住んでいた人たちに去ってもらう必要性があるという厳しい選択。
そして老人が人間らしく生きがいを感じるきっかけをつくってくれた少年との交流などを、美しい街の風景と共に描いた作品といえます。
映画『ふるさと』のあらすじ(ネタバレなし)
自然豊かな街でダム工事が進んでいました。この街はやがて消滅してしまう事になります。
この街に住む老人の伝三。妻に先立たれ、かなり認知症が進んできています。
街を去るまで伝三の息子である伝六とその妻の花はダム工事現場で働いています。このため伝三は昼は一人になってしまい、家族も心配になってきました。
やがて伝三が外出をしないために伝三専用の隠居部屋が作られる事になります。
ある日伝三に近所に住む少年の千太郎が、アマゴ釣りのやり方を教えてほしいと頼んできた。
伝三は若い頃、アマゴ釣りの名人であったため、アマゴ釣りの方法は熟知していた。千太郎に熱心にアマゴ釣りの方法を教える伝三の姿は、生き生きとしていた。
やがて伝三は、老人性の認知が次第に治り始めて…
映画『ふるさと』の解説
1983年に製作された日本映画です。
この映画は、岐阜県で建設された徳山ダム建設のために、将来湖底に沈む事となる地域の人たちの様子を描いた書物「じいと山のコボたち」を映画化した作品です。
「じいと山のコボたち」の作者の平方浩介は、ダム建設のため消えていく揖斐郡徳山村の出身であり、徳山村の教師でもありました。
1983年といえば昭和の時代であり、すでに当時の頃を知らない世代も存在する中で、緑豊かな自然や少子高齢化を本格的に迎える事になる直前に作られたこの作品は、社会的にも注目され文化庁優秀映画奨励賞を受賞しました。
主役の加藤嘉の演技は抜群であり、昭和時代を代表する俳優であった加藤嘉の晩年期の代表作となりました。
映画『ふるさと』のみどころ
伝三を演じる加藤嘉の演技力が、最大の見どころといえます。
認知が進んだ様子を、本当に状況の理解できない老人のように演じています。
隠居するための部屋ができ寝床が変わった翌日に、自分の家に帰りたいと発言するなど、まるで本当に記憶がなくなってしまった老人では、と思わせるほど真にせまった演技をする凄さは見どころです。
また千太郎とアマゴ釣りに出掛ける時の自然のすごさは壮観です。映画を見る人にいかに自然が素晴らしいかと感じさせてくれます。
アマゴ釣りで伝三が千太郎に伝えるアマゴ釣りのやり方での会話は、経験がなせる技術だと感じさせるほどアマコの性質をとらえており、見どころといえます。
特に千太郎という自分の経験を伝えていける存在を見つけた伝三が、次第に生き生きとしてくる様子は見どころと言えます。
映画『ふるさと』の感想
自然あふれる街並みが極めて美しい映画です。
街に住む人たちが、今まで暮らした街から去るまでの過程が上手く描かれている点が、優れていると感じます。
水を供給する利便性を得るためには、そこに住む人たちがその場を去らなければいけないという、ダム建設の難しい問題を改めて考えさせられる映画だと感じます。
映画『ふるさと』の登場人物・キャスト
伝三:加藤嘉(伝三の回想シーン:篠田三郎)
伝六:長門裕之
花:樫山文枝
千太郎:浅井晋
谷先生:前田吟
ふく:(伝三の妻回想シーン:岡田奈々)
ヨシ:樹木希林
政:草薙幸二郎
映画『ふるさと』のスタッフ
監督:神山征二郎
脚本:神山征二郎
製作:大澤豊、神山征二郎、後藤俊夫
原作:平方浩介
撮影:南文憲
音楽:針生正男
美術:小川富美夫